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街をデジタル空間で再現して、不測の事態に対応を!コロナ禍で政府が注目する「3次元バーチャルツイン」

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モビリティ、気候変動、持続可能性、都市部への人口集中、緊急対応時の管理…今日、都市をめぐる課題は数多く存在しており、政府だけでなく様々な利害関係者が協力し、それらの対応に迫られています。また、新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大し、事業の見直しやデジタル・トランスフォーメーションの推進が課題となる一方で、政府による迅速かつ緻密で高度な意思決定の重要性が浮き彫りになりました。都市や地域・国レベルで今後に向けた取り組みが進む中、将来の危機に備えたレジリエンス(回復力)を確立する戦略づくりとして、都市の運営に関して3次元バーチャルツインを利用する動きが広がっています。

バーチャルツインを活用することで、道路や地下にある電気・ガス・水道の管路を可視化することができる。(Image © Arup Group)

 

仏レンヌ都市圏:バーチャルツインが導く新たな都市運営のアプローチ

バーチャルツインは、ビッグデータ、IoT、人工知能、クラウド・コンピューティングなどの技術を駆使して情報を分析し、現実空間に存在するモノだけでなく仮想体験を含めて、デジタル空間で再現できる手法です。情報通信技術関連市場を専門とする調査会社ABI Researchのマネージングディレクター兼エンドマーケット調査担当バイスプレジデントであるDominique Bonte氏は、「新型コロナウイルスにより、多くの国や地方自治体におけるパンデミックへの対応不備が明るみになり、付け焼刃的な対策によって社会経済や人々の健康など、あらゆる影響が生じました。そのような中、さまざまな緊急事態のシミュレーションを行い、市民生活と都市運営への影響を把握することが重要になっています。バーチャルツインを使うことで、国のリーダー達はリソースの配置状況を可視化し、最も効果的な対応手順の判断ができます。そのため、有事においては緊急時対策業務を最適な形で提供しつつ、問題なく機能している地域の維持が可能になります」と語っています。

 

フランスでは、レンヌ都市圏[1]が市の持続可能な変革を推進し、50万人近い市民の生活の質(QOL)の向上を目標に、バーチャルツインの開発が進められています。市の形状、地形、人口統計、モビリティ、衛生などに関するデータを統合し視覚化したモデルを開発することで、市内外の利害関係者が横断的に協力し、インフラ開発、交通システム、電気・ガス・水道のネットワーク、環境対策、社会経済の発展に関する計画・管理ができるようになります。

 

レンヌ都市圏の都市計画・住宅部門を担当するAlexis Mariani氏は次のように語っています。「今日の都市計画において我々はサイロ思考になりがちですが、あらゆる利害関係者が、都市の変化をシミュレーションできる共通の参照モデルを中心にして、より緊密に連携することができる体系的なアプローチが必要です。私たちが開発した『バーチャル レンヌ』というクラウド上のプラットフォームは、都市計画に関わる全ての関係者が遠隔でデータを共有し、シミュレーションを通じて都市現象を細かく観察できるようになります」

 

意思決定の変革に欠かせない市民の声

大成建設が開発した東京都銀座エリアの商業施設・ビルを統合したバーチャル都市モデル(Image © ダッソー・システムズ)

 

日本の大手総合建設会社である大成建設株式会社の都市開発本部プロジェクト開発第一部 村上拓也氏は、「都市計画・開発は全体像を俯瞰するとともに、それぞれのエリアごとの異なった特性を深堀りしていく必要があります。そのために誰でもわかりやすい3Dのシティモデルを構築してコミュニケーションのベースを作っていく必要があると思います。スマートシティの3Dモデルは街の全体像やエリアごとの特性を分かりやすく把握できるため意思決定力が向上します。『指さし確認』という方法で具体的な場所や問題箇所を関係者間で指摘し、議論をする方法は意思決定の促進に非常に有効です。最終的に人を中心とした意思決定を行う上で3D上での情報集約、可視化は大きな役割を果たします」と語っています。

 

また、バーチャルツインはクラウド上で共有できるため、市民にとってより利用しやすい形で都市サービスを提供し、インフラ開発事業や新しいサービスが日常生活にどのような影響を及ぼすかという点も簡単に可視化できます。

 

村上氏は、「従来の街づくりは専門知識の高い限られたメンバーが素案をつくり、段階的なプロセスを経て一般に情報が公開されてきました。知識の差や図面などを読み解くスキルの差などがあり住民の意向を早い段階で取り込む、あるいは積極的な参加を促すという面で課題がありました。初期の段階でバーチャルツインを作成し共有すると専門知識や図面などを読み解くスキルのない市民も素案を理解でき積極的な参加を促せます」と続けています。

 

前述のBonte氏は、次のように語っています。「市民に情報を共有して理解を促すことは、緊急対応時の管理を成功させる上でも重要です。都市の開発や運営に関わる重要な意思決定プロセスに市民も巻き込むことで、より活発な参画意識が醸成され、QOLの改善や将来の不測の事態に対するより確実な対応などに繋がるのではないかと考えています」

 

本記事はダッソー・システムズのCompass magazine(オンライン)からの抄訳です。オリジナル記事(英文)はこちら

 

[1] 注1:レンヌ都市圏 (Rennes Metropole)
フランス西部、ブルターニュ地域圏にあるレンヌ市 (人口約21万人) を中心に構成されている広域都市圏。道路管理など一定の権限を持つ。オランド元大統領 (仏) による地方制度改革の一環として2015年1月に誕生。https://jp.ambafrance.org/article10916#t-9add

 


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