
「この時代における課題は、誰もがパーパス(=目的意識)を持てる環境を作り出すことである」 ―Facebookの共同創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏が、2017年のハーバード大学卒業式の祝辞で述べた際に注目を浴びた「パーパス」。近年では、企業や組織の「存在意義、事業目的」と訳されることも増え、世界的IT企業や日本を代表する自動車メーカーなど様々な業界で成功を収める企業経営のキーワードとして重要視されています。
しかし、このパーパスという概念は決して新しいものではありません。ダッソー・システムズでは設立当初よりパーパスに基づいて事業を展開してきました。今回のブログでは「パーパス」をテーマに、ダッソー・システムズ日本法人の代表を務めるフィリップ・ゴドブに、当社におけるパーパスの位置づけや実践について語ってもらいました。
# # #
― まずは、ダッソー・システムズが掲げているパーパスとは、どのようなものなのでしょうか。
当社では、「3DEXPERIENCEを提供し、人間・製品・自然のバランスがとれた社会づくりに貢献する」というパーパスを掲げています。このパーパスのもと、世界42カ国・地域にある180以上のオフィスで、2万人以上の社員が働いています。土木設計から航空/防衛や船舶、消費財、医薬品など、多岐にわたる業界のお客様のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を支援する中で、このパーパスは非常に重要な役割を担っています。
― パーパスとは、企業のビジョンやミッションとは異なるものなのでしょうか。
パーパスは、企業のビジョンやミッションを定義する上での根幹となる概念として位置づけられており、事業コンセプトや戦略はパーパスを基に展開されるものです。例えば昨今、世界は「製品」の取引に立脚する経済から、消費者が最終的に得る体験や経験(エクスペリエンス)を価値化して取引する「エクスペリエンス」の経済へとシフトしています。ユーザーに価値を感じさせるエクスペリエンスを作り出すためにはイノベーション、つまり異なるアイデアやデータの融合が必要です。イノベーションをきっかけに企業が持続的に成長を重ねることで、消費者の信頼を獲得し、関係性を構築し、さらに価値を高めることができると考えています。こうした考えと前述の「パーパス」に基づいて生まれたのが、当社の3DEXPERIENCEです。
― 3DEXPERIENCEも全て「パーパス」が起点になっているのですね。では企業ではなく、個人としての「パーパス」には、一体どのようなものがあるのでしょうか。
私自身のパーパスをシンプルにいうと、「他者に貢献する」ことです。私は、2019年12月に日本法人のマネージング・ディレクター(代表)に就任するまで、北米や東京で20年以上、エンジニアやセールスとして当社のビジネスに関わってきました。この長い年月をかけて、幅広い業界の世界的リーダー企業のDX支援に携わり、そこからお客様や周囲の人々のおかげで多くの内容を学ぶことができました。学ぶ機会があるからこそ、自ら結果を出して、他者に貢献できる。これは特定の仕事や業界に限らず、社会全体を通して言えることではないでしょうか。また私はこれまで、当社のビジネスの変遷とともに北米や日本など様々な場所で勤務してきましたが、国・地域を問わず、ダッソー・システムズの社員には「他者に貢献する」というパーパスが根付いていると感じています。
― ダッソー・システムズの社員には、どのような形でパーパスの大切さを伝えていますか。
私から社員に対して、「パーパスを持ちなさい」と直接的に指示をすることはありません。その代わりに、社員が自らそれに気がつく環境に身を置いてもらうことで、パーパスの意識が芽生えるように促しています。例えば、当社では年間に数回、世界の社員に向けたオンライン全社ミーティングを行っていますが、経営陣は戦略や実績を当社のパーパスに基づいて説明します。投資家向けのミーティングでも同様です。また日本では新卒社員に対して、入社して間もなくお客様のプロジェクトに携わる機会を与えています。新卒社員はプロジェクトに関わっていくにつれ、ダッソー・システムズがお客様、ひいては社会の変革に貢献していることを実感できるようになります。自ずと、「他者に貢献する」という考え方が強化されますので、その中から自社の存在理由を考える糸口につながっていくと思います。
― ダッソー・システムズの場合、パーパスがあることで、具体的にそこからどのような成果に繋がっているのでしょうか。
ダッソー・システムズはパーパスありきの会社(パーパス・ドリブン・カンパニー)です。何か具体的なシステムや指標を組み込んでいるのではなく、意思決定や事業展開、日々の業務のベースに必ずパーパスが存在しています。
あくまで一例ですが、ダッソー・システムズが2014年から実施している産官学連携のプロジェクト、「リビング・ハート・プロジェクト」があります。これは血流や心拍をコンピュータ上に再現できる心臓のバーチャルモデルを開発し、心疾患の治療、診断、予防に役立てるための取り組みです。同プロジェクトには、研究者、医療従事者、医療機器メーカー、監督機関など、全世界で95以上の組織・団体が参加していますが、参加者の目的は、患者さんへのより良い治療の提供と、患者さんのQoLの向上です。ではなぜダッソー・システムズがこうしたプロジェクトを主導するのかというと、それは当社のパーパスが、人々(患者さん)と製品(新しい医療機器や治療法)と自然(地球環境に害を与えず人体にも安全であること)の調和であり、3DEXPERIENCEプラットフォームは、時には相反するこれらの3つの要素すべてを検討し、最適解にたどり着くことができる唯一のプラットフォームだからです。
― その一方、パーパスに沿って何かを実践しようとすると、様々な困難に直面することがあるのではないでしょうか。
確かにそうですね。しかし、世の中には常にチャレンジが存在し、特に、今までと異なる新しい取り組みを実践する際は必ず壁にぶつかると思います。チャレンジには、社会的・組織的・個人的なものなど、あらゆるケースがありますが、それらをどのように克服するかを自分自身で考え、どのような場合でも、いかにしてチャレンジをチャンスと捉えるかが重要だと、私は考えています。チャンスとして捉えることができた時に、組織や個人は影響力を持つことができるのではないでしょうか。
ダッソー・システムズ株式会社 代表取締役社長 フィリップ・ゴドブ
― まとめると、「組織におけるパーパス」とはどういうものでしょうか。
パーパスは組織の経営において不可欠です。当社が支援しているお客様は、世の中に素晴らしい価値を提供することで成功を収めており、成功の根底には必ずお客様が掲げているパーパスが存在しています。リーダーがしっかりとパーパスを定義し、社員がパーパスを意識するきっかけを絶えず与え続けることで、一体感のある組織となり、パーパスに沿った事業展開が進むのだと考えています。
― 本日はありがとうございました!
【略歴】 フィリップ・ゴドブ(Philippe Godbout)
ダッソー・システムズで、20年以上にわたって様々な職務に従事し、特に航空宇宙・自動車産業に関する経験、知見を持つ。北米と東京にて、コンサルティング・ビジネスのマネージメントや営業部門責任者を歴任。2019年12月より現職。
# # #
ダッソー・システムズのパーパスについて: