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【SDGsとデジタル化の掛け算】7: SDGs時代に求められる企業の組織能力

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ダッソー・システムズでサプライチェーン・生産技術・生産管理・製造実行領域(DELMIA製品)でコンサルタントをしている立田です。

 

このシリーズでは持続可能な世界創り(SDGs)を見据えた社会の変化やそれを支える当社の理念経営、ビジョン・テクノロジー、サービスなどについてできるだけ分かりやすく語っていきます。

 

今回はSDGs時代に求められる企業の組織能力を軸にして下記の3つのポイントを紹介します。

 

まず1つ目のポイントは企業の組織能力です。私が考えるSDGs時代に求められる企業の組織能力には下記の5つがあると考えています。

 

それぞれ見ていきましょう。

 

まず1つ目の組織能力は「目標設定能力」と「パーパス策定能力」です。「目標設定能力」は売上高や利益率、ROE(Return on Equity、株主資本利益率)など1年から数年先の明確な数値目標を設定する能力です。それに対して「パーパス策定能力」は十数年から数十年先の自社のパーパス(存在する意義・理由)を策定する能力です。パーパスは目標とは異なり、数値ではなく、文字で抽象的に表現され共有されることが一般的です。

 

2つ目の組織能力は「足し算型マネジメント」と「逆算型リーダーシップ」です。「足し算型マネジメント」は現状の能力を効率的に活用して(足し算)目標に向かって組織を管理する能力です。それに対して「逆算型リーダーシップ」はパーパスの達成に必要な道筋を逆算しつつ組織の能力を最大化する能力です。

 

3つ目の組織能力は「競争型バリューチェーン構築能力」と「協創型バリューネットワーク探索能力」です。「競争型バリューチェーン構築能力」は同業他社と競争しながら市場シェアを獲得するために効率的なバリューチェーンを構築する能力です。それに対して「協創型バリューネットワーク探索能力」は同業種・異業種を問わず顧客の価値を創造する企業・担い手を探索して文化・慣習が異なる中で協創する能力です。

 

4つ目の組織能力は「計画実行能力」と「試行錯誤力」です。「計画実行能力」は設定した目標に対して失敗を避けながら効率的に実行する能力です。それに対して「試行錯誤力」は正解が明確に見えていない中で失敗を含め試行錯誤を行い、答えを探す能力です。

 

最後の5つ目の組織能力は「経験型の製品化能力」と「モデル及びデータ駆動型の価値提供能力」です。「経験型の製品化能力はベテランの経験(暗黙知)に基づいて高機能・高品質な製品を作りだす能力です。それに対して「モデルおよびデータ駆動型の価値提供能力」は組織の知識をモデル化(再利用しやすいように形式知化)し、顧客や利用データなどを元にして継続的に価値を提供していく能力です。

 

ではなぜSDGs時代は新たな能力が求められるのでしょうか?それは時代が変わり、企業を取り巻く市場や顧客の価値観が大きく変わりつつあるからです。

 

ここ20-30年は「効率を追い求める営利主義」の時代でした。

 

消費者は少しでも性能がよく、より良いQCDの製品を買い求めました。多くの企業は営利を軸に売上高や利益率の成長を目標に置き、同業他社と競争しながら市場シェアの拡大を狙いました。そのために効率的なバリューチェーンの構築・維持を目指したと言えます。

 

組織運営の面では効率的に事業を回すために計画に則ったマネジメントを行い、失敗を最小限に抑えることを是としました。顧客の求める高機能・高QCD製品を実現するためにベテランの知識・経験・技術を頼りにしてきました。

 

これからの時代は「社会問題の解決を目指す幸福主義」の時代と言えます。これまでの「効率を追い求める営利主義」時代では自然環境や一部の労働者(過剰労働や児童労働、劣悪な環境労働など)を犠牲にしながら、営利を追い求め、多くの社会問題が生まれました。これからの時代は人類が抱える社会問題を解決しながら、一部の人間の幸福だけではなく、全人類と自然環境の幸福を目指す時代になります。

 

本シリーズ・第二回で書いたように今後は社会課題を解決しながら「QoL(Quality of Life:生活の質)を引き上げながら資源の消費を減らしていく」世の中が求められていきます。これまではモノで満たされることで幸せとされていた時代からココロの幸せ(幸福)を追い求める時代となっていきます。

 

同時にVUCA(Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性)という言葉で表現されるように自国主義の台頭や自然災害の多発化・甚大化、消費者ニーズのさらなる個別化・複雑化、テクノロジーの急速な普及などこれまで以上に先の読めない変化の大きな時代となります。

 

これまでよりも変化が大きく考えることが膨大に増えていく中での企業経営は大海原で現在地も方角も分からない中での舵取りすることが求められていると言えます。これは経営も組織運営もこれまでとは違った能力が求められることを意味しています。

 

市場・消費者を見ていくとこれからは社会問題を解決することを織り込んだ価値を求めていくことでしょう。媒体はコトやサービス、コンテンツなど様々だと思われますが機能に主な価値を置いたモノは廃れていきます。

 

多くの企業は短期的な企業経営だけでなく、長期的に自社のあるべき方向をパーパスという形で策定し、自社の舵取りを行っていくことが求められます。(パーパス策定能力)

 

定めたパーパスは長期的目的ですので実行されなければ意味がありません。パーパスの達成に向けて必要な道筋を逆算して、あるべき姿を目指しながら組織を動かして、能力を最大化していくことが求められます。(逆算型リーダーシップ)

 

提供価値が機能から社会課題の解決、提供媒体がモノからコト・サービス・コンテンツに変わることはそれを創出する関係者やプロセスが変わることを意味しています。関係者を見ると社会課題を解決していこうとすると同業種の協力だけでは足りず、同業種・異業種のアイデアやテクノロジーなどが必要になります。(協創型バリューネットワーク探索能力)

 

プロセスを見ると計画的で効率性を重視した製品化の流れと異なり、正解が明確には見えていない中で顧客とダイアローグを重ねながら試行錯誤をして提供価値を具現化していく能力が求められます。これは新たな組織能力と単純に表現できるものではなく、失敗や試行錯誤が許容される新たな組織文化の醸成も必要だということを意味しています。(試行錯誤力)

 

人依存、暗黙知前提の業務も変わることになります。組織の知識や経験はモデル化され組織全体で活用ができることになります。このモデル化した形式知のおかげでより複雑な問題や背反性の高い問題でもより最適な解を得やすくなります。顧客データや利用データを元に継続的に改善をしていくことでより適切な課題解決、顧客に継続的に価値を提供していくことができます。(モデルおよびデータ駆動型の価値提供能力)

 

 

この新たな5つの組織能力は経営者の一言や組織の買収などですぐに実現できるものではありません。時間がかかります。従業員の意識と行動を変革させる必要があります。成功要因の一つは変革初期段階からの巻き込みです。組織全体でパーパスについて議論したり、最新のテクノロジーをベースにあるべき姿を具体的にイメージしたりすることが変革の一歩となります。

 

当社ではこの変革初期段階で関係者を巻き込みながらあるべき姿を具現化するワークショップ(ビジョンワークショップ)を提供しています。次回はこのビジョンワークショップの概要について紹介します。


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