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パッケージの市場投入までの期間を85%短縮!欧州企業が語る3次元シミュレーションの活用とは?

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木質繊維から上質な軽量板紙を製造するフィンランドの大手板紙メーカー メッツァ・ボアルド社(Metsä Board)は、サステナビリティとカスタマーサービスの分野でフロントランナーになることを目指しています。ダッソー・システムズのウェブマガジン「COMPASS」編集部では、メッツァ・ボアルド社の研究・製品開発担当バイスプレジデントを務めるマルック・レスケラ氏と研究開発マネージャーのペッカ・スオカス氏に、この目標達成のために3次元シミュレーションがどのように役立っているのか、その活用方法について伺いました。

 

―メッツァ・ボアルド社と御社の製品および御社の特長について教えてください。

 

レスケラ氏:当社は、板紙製造だけでなく、認可を受けた木質繊維を利用したリサイクル可能なパッケージの設計サービスも提供しています。これが我々のエンジニアリングへの取り組みであり、当社に独自性をもたらしている要素です。我々は、迅速に、コスト効率を考慮した持続可能な方法で、日々高まるパッケージの需要に応えることを目指しています。

 

世界的にパッケージに対する需要が高まる中、化石燃料の代替となる持続可能な新しいソリューションを生み出すニーズも高まっています。当社はこの分野の先駆者を目指しており、軽量で、リサイクルや堆肥化が可能なパッケージ製品を開発するべく努力しています。また、当社では二酸化炭素排出量の削減方法を模索し続けており、2030年までに化石燃料を使わない生産と製品を実現することを目指しています。

© Metsä Board

 

―御社の顧客層について教えて下さい。お客様はどのような理由で、御社を採用するのでしょうか。

 

レスケラ氏:当社は、消費財や医薬品など、世界中のあらゆる業界でビジネスを展開する幅広いお客様にサービスを提供しています。実際、消費者は当社の板紙でできたパッケージを、毎日、数百万個単位で使用しています。当社の主要市場はヨーロッパ、次いでアメリカですが、アジア太平洋地域の企業からの需要も増えてきています。

 

お客様は、当社の板紙工場の卓越性と注文製造の高品質パルプをベースとした、製品の優れた品質と品質の均一性を高く評価してくださっています。また、当社の技術実績だけではなく、持続可能な開発に向けた熱心な取り組みにも評価をいただいています。パッケージごみの削減が世界で重要度を増す中、当社のお客様も、徐々にサステナビリティを優先するようになってきているのは確かです。我々はサステナビリティにおいて秀でた企業でありたいと考えており、パッケージの材料と構造を最適化することで、持続可能で高性能なパッケージ ソリューションをお客様に提供することができます。さらに、当社の独自サービスである「Metsä Board 360 Services」の導入により、我々はさらに先を行くことができます。

 

―「Metsä Board 360 Services」について、教えてください。

 

レスケラ氏:Metsä Board 360 Servicesは、お客様がニーズに合わせて最適なソリューションを生み出すと同時に、パッケージによる環境への影響を低く抑えられるよう支援することを目的としています。高度なシミュレーション技術を活用することで、お客様が持つ既存パッケージ ソリューションのバーチャルツインを作成し、既存のパッケージが新しいイノベーションに対してどのように機能するか、様々なシミュレーション環境で検討することができます。これにより、機能性や再生可能性だけでなく、ブランドへの影響も改善すると同時に、二酸化炭素排出量とコストの両方を最小限に抑えることができます。さらに、物理的に試作品を作成する場合と比較して、短期間で上記のプロセスを行うことが可能になり、お客様に最適な板紙を提案してデザインを改良するまでの期間を85%も短縮することができます。

 

スオカス氏:このサービスは、当社の業務に非常に大きな変革をもたらしています。例えば、従来では、パッケージを物理的に試作した後、試作を他の場所に移して検証しなければならず、その検証結果をもとにデザインを変更し、一からプロセスをやり直していました。これは時間とコストがかかり、お客様にはそれだけの時間と予算はありません。コンピュータ上に製品の3次元バーチャルツインを作成することで、物理的に試作する工程を排除すると同時に、お客様にさらに優れたカスタマーエクスペリエンスを提供できるようになりました。

 

―御社のビジネスにおける課題はございますか。サービスを提供するお客様からの要求の変化に応じて、さらなる複雑性が生じていますか。

 

レスケラ氏:当社は、お客様のニーズに合わせて、高まる要求に対応したいと考えています。例えば、消費財業界のお客様は、多くの場合、クリスマス商戦に向けて春から準備を進めますので、我々もその時期に合わせて備える必要があります。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響でe-コマースの需要が大幅に拡大し、製薬業界からのニーズも増加しさらに要求が高まっています。

 

e-コマース市場では、実店舗とは異なる特有のパッケージ ニーズがあります。発送されたパッケージが受取主の手元に届くまでに荷物の上げ下ろしが頻繁に行われるなど、多くのタッチポイントが発生します。つまり、こうした取り扱いに対して耐久性があり、軽量で二酸化炭素排出量を最小限に抑えられる最適な板紙とパッケージ設計が必要になります。

 

製薬業界では、また異なる需要があり、厳しい法規制を満たし、極端な温度の変化にも耐え得るパッケージが求められます。当社が提供する新型コロナワクチンの保管・輸送用パッケージの場合、-70℃という低い温度でも、既定の厚み、力学的強度、給水などの特性を保持する必要がありました。

 

―こうした課題に対処するために、どのように3Dシミュレーション技術を活用していますか。

 

スオカス氏:シミュレーションにより、迅速に、ほぼ無限に製品の用途を検証することが可能です。消費財向け製品に関しては、強度、サイズ、機能の最適なバランスを実現し、そのプロセスにかかるコストを抑えることができます。また、板紙を軽量化することで、大幅な材料の節約も実現できます。当社は、年間130万トンの板紙を生産していますが、それをすべて1個19グラムのシリアル用パッケージの生産に当てるとすれば、1日に1億6千万個のパッケージ生産が可能になります。そのため、板紙をたった1%軽量化するだけで、1日に160万個のパッケージを生産するのに必要な天然資源の量を節減することができます。

 

また、シミュレーションは、製薬業界のお客様にも同様のメリットをもたらします。-70℃の温度下におけるパッケージの性能をテストするためにバーチャル・シミュレーションを実行し、輸送テストを板紙調整テストと組み合わせることも可能です。以前は、実際の試作品を用いて、数週間かけてこうした検証を行っていましたが、今ではわずか一日ですべてのテストを実施できます。

 

―短期、長期を含めて、御社の戦略における次のステップはどのようなものでしょうか。

 

スオカス氏:当社の成功は、お客様に最適な板紙を提案し、新たなソリューションを開発してお届けするまでの期間をいかに短縮するかによって決まってきます。シミュレーションが、その達成に貢献することは言うまでもありません。こうした高度なテクノロジーを活用することで、従来のサプライヤー以上に、より迅速に成功を導くことができると確信しています。その新たな可能性と今後シミュレーションによって拡大していく様々な用途に大いに期待しています。

 

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ダッソー・システムズの消費財・小売業業界について

https://ifwe.3ds.com/ja/consumer-packaged-goods-retail

 

本記事はダッソー・システムズのCOMPASSマガジン(オンライン)からの抄訳です。オリジナル記事(英文)はこちら


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