
新興企業の設立は、どの業界でも簡単ではありませんが、急速に変貌を遂げるハイテク業界では、持久力と柔軟性の両面で特別な取り組みが必要になります。本誌COMPASSは、そのような企業に共通の課題と戦略を見出すために、実際の経験から学んだことや今後やり方をどう変えることができるかについてハイテク新興企業4社の創業者からお話を伺いました。
成長中のハイテク新興企業では、刺激的でやりがいが感じられる一方、ストレスのたまることや困難もあります。急成長している小規模企業は、機動性が高く熱意に溢れていますが、資本不足やスタッフ不足のほか、組織の成長が急速すぎてインフラの対応が間に合わないなど、制約も受けています。
成功した新興企業ならではの極めてユニークな特性を維持しながら、そこからの進化を図ることが課題です。こうした微妙なバランスをとる行動にどのように取り組んでいるかを理解するために、Forbes誌の寄稿者でInc.誌の元エディターであるBoBurlingham氏、米国を拠点とする業界・ITコンサルティング会社VDCResearchのエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるChrisRommel氏、および新興企業から名声が確立した企業へと困難な移行を進めているハイテク企業4社の創業者に連絡を取りました。◦BenStagg氏、HaloSmartLab(s米国ノースカロライナ州)のCEO兼共同創業者。同社は、竜巻の早期警報システムにネットワーク接続可能な煙探知器を開発。
JackKutner氏、Bigbelly(米国マサチューセッツ州)のCEO。同社は、コンテナの廃棄物除去が必要になると市職員に通知がいく、ネットワークへ接続されたソーラーパワー廃棄物コンテナを製造。
◦SyedAhmed氏、Savorte(英国)のCEO兼創業者。同社は、動画広告を再生しながら、同時に利用者の動きをモニターして洗面所の保守サービスが必要な場合にスタッフに警告を出すスマート・ハンドドライヤーを製造。
◦AlanWeinberg氏、Myomo(米国マサチューセッツ州)のマーケティング担当ディレクター。同社は、筋電装具および各種サービスによって上肢まひの克服を支援。
成功は計画から始まる
あらゆる新興企業の出発点は熱意と刺激的なアイデアですが、安定した基盤を生み出すのに不可欠な3番目の柱である「健全な事業計画」を忘れている人が多いです。
Savortexに初期の成功をもたらした「秘訣」について聞かれると、Ahmed氏は次のように答えます。「当社では、計画策定に数年を費やしました。会社を立ち上げる前に、少なくとも2年かけて当該セクターを調査して困難な点を把握し、その上で市場動向の検討に着手したのです」
計画があっても、計画通りに進めることは容易ではないと、Weinberg氏は説明します。「現実問題として、特に製品開発やエンジニアリング段階の計画では、ある程度までしか予測できません。すぐ簡単に別のことに気を取られてしまいます。新しいアイデアを調べてみる価値がないと言うわけではありませんが、タイミングが問題です。戦略計画の見直しを継続的に行ってください」。
頻繁に見直しを行うことのメリットは、資金調達の新たな機会が出現した時点で計画は既に最新であることだと、同氏は述べています。
「進化する企業ニーズに ツールやプロセスを適応させて 支援する必要がありますが、 実用的なものにするには、 ある程度の規模が必要です」
CHRIS ROMMEL氏
エグゼクティブ・バイス・プレジデント、VDC RESEARCH
何をすべきかだけでなく、成功がどのようなものになるかについても具体的に思い描くことが重要であると、Burlingham氏は指摘します。
「多くの起業家には、最終的にどこに到達したいかという具体的な計画がありません。物事を行っているうちに全く意図も計画もしていない結果となったり、理解できない物事が起きたりするのです」
適切なシステムがコラボレーションを支援
全員が同じビジョンを共有して1つの部屋で仕事をしていれば、コラボレーションは容易です。しかしながら、会社が成長するのに従い、企業の舵取りを行う人と日常業務を行う人との間には自然と距離が生じてきます。
各従業員が創業者に直接会えないくらいの規模の組織になると、企業は、個々の知識に基づいた場当たり的なプロセスから組織的なプロセスへと移行する必要に直面します。初期段階でよく使われる実用的ながら低コストのツールでは、こうした移行に必要な拡張性が担保事できない、ということがよくあります。
「進化する企業ニーズにツールやプロセスを適応させて支援する必要がありますが、実用的なものにするには、ある程度の規模が必要です」と、VDCのRommel氏はアドバイスします。
Kutner氏によると、Bigbellyでは、導入が進むようになった転換点は組織の「声」でした。たとえば、セールスチームが発注しにくいと不満を言うことや、カスタマーサポートが顧客満足度の管理が難しいと感じたことです。
成長を管理しているときに、「適切な時期がくれば適切なことが起きるだろうという直感や信念だけに頼ることはできません。企業は、個々の事例や定性的なものから定量的なものに基づく意思決定に移行する必要がありました」と、Kutner氏は述べています。
環境とともに変化する
とはいえ、古くなったプロセスを自動化することが答えではありません。
「現状の処理手順を自動化するだけでは無意味です。抜本的にプロセスを改革した上で、自動化しなければなりません」と、Kutner氏は続けます。
企業の優先事項が変化していくのに合わせることが難しいシステムは、全くツールを使用していないのと同じくらい問題があります、とStagg氏は説明します。「高度な知識と起業家精神との間の適切なバランスを見つけなければなりません。企業の経営状態を確実にモニターしながら、同時に現状を打破していくことが重要です」
「成長とは面白いものです。時には困難なことや面倒なこともありますが、要はバランスです」と、Stagg氏は述べています。
著者: Allan Behrens