
製造・組立のための設計(DfMA)手法を導入することで、製造メーカーによって開発されたプロセスを建設業の課題に応用できます。Compass誌では、建設・製造業に特化した総合テクノロジー企業CadMakers社の共同創業者兼CEOであるJavier Glatt氏に、DfMA手法を応用した世界最大級のマスティンバー建築についてお話を伺いました。
CasMakers社の建設アプローチがユニークなのはどのような点ですか。
JAVIER GLATT氏(以後JG): 当社は技術志向の企業です。大規模なビルの製造を目指しています。そのためには、製造原理を応用する必要があります。この原理だと、現場での作業のかなり前から取り掛かれることが多いのです。大部分のコストが現場で費やされることから、そこにかける時間を最小限に抑えなければなりません。
製造原理を取り入れた最近の建設プロジェクトの事例を挙げていただけますか。
JG: 「トールウッド・ハウス・プロジェクト」としても知られている、18階建複合マスティンバー建築「ブロック・コモンズ」の作業が完了したところです。この種の建物で世界一の高さを誇るものです。建物の大部分は現場組立ではなく、製造してから現場で据え付けられました。
2017年の建築・建設プロジェクトの大半には、相互運用性に関する要件が数多く含まれています。設計者や構造、設備、地盤を担当する各エンジニアのほか、窓を専門とするファブリケーターや配管システムの設置業者などの建設会社が関与し、そのほとんどの関係者が独自のソフトウェアを使用しています。誰がどんな作業をしているのか誰も確認できないため、現場では多くの交渉が発生します。
「この方法で建設できれば、工期を大幅に短縮することができるでしょう。
そうなれば、他の分野への投資にまわせる十分な資金を確保してコスト削減を実現し、
さらに改善された革新的な手法を確立することができます」JAVIER GLATT氏
CADMAKERS社共同創業者兼CEO
トールウッド・ハウスでは、我々は一元管理された統合3Dモデルを作成しました。各関係者からのすべての情報がモデルに集約されており、そこから別のチームに伝播されます。こうしたプロセスは自動車や航空機の製造業で普及していますが、これを設計・施工分離(DBB)方式で調達する建設プロジェクトに応用しようとしました。リスク管理の観点からも、また構造エンジニアリングの観点からも、科学的知識は非常に強力でした。応用は可能だと思っていましたが、木造建築で実現できるかどうか確信がありませんでした。
テクノロジーによって、プロセスをどのように改善できましたか。
JG: トールウッド・ハウス・プロジェクトは、単に建物を計画、設計するプロセスだけでなく、建物を建てるプロセスにおいても、真のコラボレーションとは何を意味するのかを示す良い事例です。定義の最も精細なレベルまで統合された3Dモデルを使用して設計と施工をつなげることができれば、もっと早い段階から施工担当の関係者に参加してもらうことができます。誰もがプロジェクトを可視化できるので、この方法はコミュニケーションを図る上で優れています。たとえば、「この方法で建設できれば、工期を大幅に短縮することは可能だろうか。他の分野に投資できるたけの資金的な余裕はできるだろうか」というふうに質問することも可能です。
トールウッド・ハウス・プロジェクトでは、「製造のための設計」はどのような成果をもたらしましたか。
JG: 驚異的なスピードを実現できました。あらゆる情報を1つに統合し、全員が共通の言語を話して、施工担当の関係者からフィードバックを得られるようにしたからです。また、シミュレーションソフトウェア内でプロセス全体をデジタル化しました。この建物は18階建構造でしたが、9週間で完成しました。これは高層ビル建設の中でもかなり早いペースで、重要なポイントだと思います。この方法で建設できれば、工期を大幅に短縮することができるでしょう。そうなれば、他の分野への投資にまわせる十分な資金を確保してコスト削減を実現し、さらに改善された革新的な手法を確立することができます。
次に建設業で実践される製造プラクティスはどのようなものでしょうか。
JG: 建物の設計、製造、据付のプロセスを加速させて改善を図り、建設プロジェクトのコストが4%、5%、さらには10%と減少に転じると、実際、物価が下がります。これが建設や製造の枠にとどまらず、さまざまな業界に作用し、さらなるイノベーションにつながる強力な機会をもたらすことになります。
著者: Maryann Dennehy、Rachel Callery
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