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5月30日、31日 ザ・プリンス パークタワー東京にて開催
聞き手/谷本有香(フォーブスジャパン)
語り手/山賀裕二(ダッソー・システムズ株式会社 代表取締役社長)
谷本 先ほど、今年のダッソー・システムズのチャレンジとして、「ビジネス環境の変化に応じた社員の意識改革とお客様への啓蒙活動」を挙げておられましたが、そうした顧客や潜在的な顧客の方たちに対して、どうアプローチしていくのでしょうか。
山賀 一言で言うと「あの手この手」ですね(笑)。そもそもお客様の9割が「ダッソー・システムズはCADの会社」と認識されているそのイメージから変えなければなりません。もしかすると社員も心のどこかにそういう意識が残っていたり、CADの会社だと思われることを許容したりしているのかもしれない。まずは社員ひとりひとりが自社の基幹事業に対して意識を変え、自分の言葉で語る必要がある。ご家族や友人に「私はこんな仕事をしている」というプレゼンテーションを雑談めいた雰囲気でもいいからやってみる。細かいことに思えるかもしれませが、それもまた大切なマーケティング活動だと思います。プレゼン用に、自分の言葉で書いた資料とスライドを用意して、営業だけでなく、人事も経理も全社員がそれくらいの意識を持つことで初めて企業の気風は変わってくるものだと思います。
谷本 顧客や潜在顧客の啓蒙の前に、社員の意識改革が必要である、と。
山賀 もちろんメディアへの発信なども必要です。あ、谷本さん、本日の対談の告知などもどうぞよろしくお願いします(笑)。ただし、どんな啓蒙活動やメディア露出、CMなどを打ったとしても、社員の思考との間にギャップがあったら意味がありません。また、実際にビジネスをご一緒いただいたお客様から他のお客様に伝わる、いわゆる口コミ的なマーケティングですね。社内外に統一したイメージを持ってもらうのは簡単な話ではありませんが、私たちが求めるもの、目指すことへの共感の輪を少しずつでも広げていく、そのためのタッチポイントも増やしていきたいですね。
谷本 今後手がける事業や業種、業態についてはいかがでしょう。既存の自動車などの産業や「CAD」以外の事業の幅について伝えていくことも大切なように思うのですが。
山賀 仰るとおりです。自動車を中心に飛行機や鉄道、造船といった広義のモビリティをはじめ、建設機械のような大型機械からロボットのような精密機械領域まですそ野はますます広がっています。まず、こうした土台に近い分野に対して、「新しいものづくり」を提案していきます。すべての製造業が、世の中の変化に応じたプレッシャーを受けているわけですから。
谷本 医療分野での3D技術の進歩も目覚ましいものがあると聞きました。
山賀 手術のシミュレーションを3D上で行うのはもう当たり前というステージに入っていますし、さらに個別化医療の実現に向けて、心臓のデジタルモデルを作って心拍に応じた血流や筋肉の動きを分析したり、人工弁を3Dプリンターで作ってしまったり、そうした研究開発も行われています。
谷本 最近、医療ドラマでもそうしたシーンが描かれるようになりましたが、あれはフィクションではなく、手が届く現実なのですね。
山賀 医療のようなミクロの世界だけではありません。われわれは都市問題、環境問題のようなスケールでの課題にも取り組んでいます。例えばいまシンガポール政府とご一緒させていただいているバーチャル・シンガポール。「シンガポールまるごと3D化プロジェクト」などともいわれます。国土はもちろんすべての建物や自然環境なども含めて3D化するプロジェクトで、災害の避難経路や疫病の感染経路、太陽光パネルで得られる電力なども含めた壮大なシミュレーションを行っています。このような社会へ貢献する領域における取り組みは非常に重要です。こうしたスマートシティ構想はフランスのレンヌでも進んでいますし、国内のいくつかの自治体ともお話をしています。今後、国内の事例も紹介できるようになるといいですね。
谷本 新しい領域のお話というと、新しいビジネスモデル「3DEXPERIENCE Marketplace」についてもお話を伺いたいのですが。
山賀 私どもは「お客様がイノベーションを起こす、その実現を支援する」というスタイルでビジネスに取り組んでいますが、私どものお取引先にはたいへん広範囲な業種がある。例えば3Dプリンターひとつとっても、3Dの設計を請け負う会社、原料会社などさまざまな立ち位置がありますよね。もちろん3Dプリントを出力するサービス事業会社もある。そうした中堅、中小企業に対してAmazonのようなマーケットプレースをわれわれ自身が提供する。売り手と買い手をつなげて、取引価格の数%を手数料としてわれわれが頂戴する。仕組みとしては非常にシンプルなモデルです。ただこの業界では、どんどん新しいプレーヤーが出てきますから、そのサポートという意味でも面白いサービスだと考えています。
谷本 少し角度を変えた質問をさせてください。今年のコーポレート・ナイツ社の「Global 100」(2018 Top 100 Most Sustainable Corporations in the World:2018年世界で最も持続可能性の高い企業トップ100)で、ダッソー・システムズは第一位に選出されました。これまでも上位の常連ではありましたが、一位は初めてですよね。
山賀 ありがたいことですよね。Global100の指標にはエネルギーや炭素排出量などの「資源管理」、イノベーション能力やCEO・従業員の報酬などを見る「財務管理」、そして離職率や管理職に占める女性の比率などで判断される「従業員管理」といった指標があります。それらの総合評価として第一位を獲得できたのは素晴らしいし、誇りでもある。個人的には「サステナビリティ」の本質とは、教育や医療など人類の存続や発展に欠かせない分野に常にイノベーションが起き続けている状態を指すと解釈しています。ですからわれわれが社会に対して貢献ができているとすれば、それはイノベーションを起こし続けるお客様のおかげでもあるはずなのです。
谷本 実際、今回の100社の顔ぶれを見ると、ダッソー・システムズと取引のある企業も少なくありませんよね。
山賀 そうですね。そういったお客様に対して、イノベーションの気づき、道具立て、その実現の道筋をご一緒する。それが我々の仕事です。ですからForbesさんの”Most Innovative Companies”で64位に入ったのも、すごく元気が出るうれしい話なんですよ。イノベーティブでなければサステナブルにはなりえません。
谷本 日本の経営者にサステナビリティについて伺うと、「イノベーティブ」という視点なしで単なる「環境問題」だと捉えているケースも少なくありません。どちらかというと「保守」のようなイメージが強いんですが、やはり「進化」は重要なキーワードですか。
山賀 進化しないと、止まってしまいますし、もしかすると取り残されてしまうかもしれない。実際、IT業界は非常にこわい業界で、マーケットやお客様の変化で業界全体の趨勢がいとも簡単に変わってしまう。私が以前在籍していたIBMは、当時汎用機を売るハードウェア中心の会社でしたが、ダウンサイジングというトレンドに飲み込まれて一時は倒産寸前にまで追い詰められた。マイクロソフトもWindowsこそ普及していたけれど、エンタープライズの領域では、かつては企業にとって頼れるパートナーとしてのポジションを確立していなかった。どちらも事業領域の転換などの変革があって、いまの成功を手にしています。しかしそれすら未来永劫続くという保証はありません。開発・販売側の都合ではなく、お客様のニーズにしっかり向き合って、自分たちが変化し続けることが必要だと考えています。
谷本 ちなみに山賀さんご自身の仕事人としてのモットーはございますか?
山賀 一番私が弱ってしまう質問ですね(笑)。お恥ずかしいことにあまり確たる言葉を持っていないんですが、常に「誠実」「正直」「オープン」であろうとは思っています。企業内においては「派閥」のように企業活動に必要ないもの……と私は思っているんですが(笑)、そういう不要なものがある会社もありますし、仕事との向き合い方に迷うこともあるでしょう。でも、迷ったときに誰もが立ち返ることができるこうしたシンプルなキーワードは、特にいまの時代、仕事人にとってとても大切な言葉だと思います。もちろん、企業にとっても非常に重要なキーワードであることに違いありません。
(続く)
Text/Tatsuya Matsuura Photo/Soichi Ise
<バックナンバー>
【特集・第一回】ダッソー・システムズのいま、そして3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2018
【特集・第二回】ダッソー・システムズのいま、そして3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2018
【特集・第三回】ダッソー・システムズのいま、そして3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2018
<プロフィール>
山賀裕二●ダッソー・システムズ株式会社代表取締役社長。1983年慶應義塾大学卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。2007年から日本マイクロソフトにて、執行役常務クラウド事業推進担当としてOffice365などの日本市場における立ち上げ、クラウド事業のアライアンスを担当する。2015年にセールスフォース・ドットコムの専務執行役員エンタープライズ営業担当に、その後2017年2月に専務執行役員デジタル・イノベーション事業統括としてお客様のデジタル変革プロジェクトの推進を指揮する。2017年11月より現職。
谷本有香●フォーブス ジャパン副編集長 兼 イベントプロデュース チーフプロデューサー。証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、2004年米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスター、同社初の女性コメンテーターを経てフリーに。トニー・ブレア元英首相、マイケル・サンデル ハーバード大教授をはじめ世界のVIPへのインタビューは3000人を超える。跡見学園女子大学 兼務講師。
投稿 【特集・第四回】ダッソー・システムズのいま、そして3D EXPERIENCE FORUM JAPAN 2018 ~2017年11月に、ダッソー・システムズ株式会社代表取締役社長に就任した山賀裕二にフォーブス ジャパン谷本有香さんが聞く~【参加登録締切間近!】 は ダッソー・システムズ株式会社 公式ブログ に最初に表示されました。