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アレもソレもDassault Systemes! HACKberry編

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HACKberry

                    HACKberry

 

2015年にグッドデザイン金賞を受賞した「HACKberry」。近未来感あふれるデザインで、話題を呼んだ日本発の電動義手である。開発メーカーのexiiiでHACKberryのデザインを担当した小西哲哉さんは、デザインに込めたコンセプトをこう語る。

 

「これまでの義手はデザインの選択肢が、人の手を模した形のものしかなかった。でも他のウェアラブルアイテムと同じように、『ユーザーが個性を表現する』ためのツールだと考えれば、違う表現もあるはず。そう考えたんです」

 

作りたかったのは「デザインの選択肢」。人の手を模したものだけでなく、メガネのように、スニーカーのように、ユーザーが選択できるアイテムだった。

 

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「これまでの義手は、150万円以上という高額なものでした。でもHACKberryは、3Dプリンターさえ持っていれば、3万円程度の材料費で作ることができる。そして何よりも3Dデータや、回路の基盤データ、すべてをオープンソースにしていること。価格やインフラなどが障壁だった人でも使えるようになるんです」

 

その設計に必要だったのが、3DCADソフトウェア『CATIA』だった。

 

「HACKberryのデザインはすべてCATIAで作られています。なかでも一番重要なのは、頭の中に描いたどんな曲線でも再現できること。こうしたツールって、どうしてもイメージをそのまま再現するのが難しいところがある。ものによってはソフトの操作性に引っ張られて、おかしなものになってしまう。本来あるべき形をそのまま描くことができるというのは、デザイナーにとって生命線なんです。本当、最初に覚えたCADがCATIAでよかった。僕にとって、現時点でモデリングにおいては他の3DCADソフトという選択肢はないと言ってもいいですね」

 

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3次元空間内の複数の制御点を通るスプライン曲線を引くといった実作業に加えて、履歴が「めちゃくちゃ強い」のもポイントのひとつだという。

 

「例えば、HACKberryで言えば、世界中の人がいろんな人が使うにあたって、サイズなどを細かく変える必要があるわけです。海外では、子供向けに70%のサイズにカスタマイズしてくれたエンジニアもいます。そうしたサイズ変更も、CATIAなら作業する人の負担を最小限にすることができる。実際の作業にあたっては、試行錯誤をしながら行きつ戻りつという場面も多いし、パーツごとにいちいち分割して保存しなければならないケースもある。でもそうした面倒な操作はアプリのほうでまとめてくれて、履歴を引き出すことができる」

 

小西さんも「CATIAのすべての機能を使いこなしているわけではない」というが、「それでも圧倒的」だという。exiiiの自社サイトには、アプリケーションについての意見交換も行えるフォーラムが開設されている。

 

「ハードさえあれば、そう難しい作業ではないと思います。実際、生まれつき片手のない方が自身でデータをダウンロードして、自ら3Dプリントアウト。ハンダゴテを脇にはさんで基盤を作ったという事例もあります。そのくらい、やさしい設計を心がけています」

 

3Dプリンターや、基盤を加工するための切削加工機などは誰もが持っているわけではなくとも、秋葉原の「DMM.make AKIBA」のように、専門的なハードウェアを時間貸しするスペースも誕生した。

 

「オープンソース」という旗印の元に、世界中のエンジニアやデザイナーが集結。心待ちにする誰かのためにHACKberryは、今日もカスタマイズされ続けている。

 

Text&Photos/Tatsuya Matsuura


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