
HACKberry
今年2月、秋葉原の「DMM.make AKIBA」で「Designer’s Cafe in DMM.make AKIBA」というカフェ方式のハンズオンセミナーが1日限定で行われた。開場中は設置された端末に、Dassault Systemesの3DCADソフト『CATIA』の最新版が自由に操作できるフリースペースに。HACKberry編で登場した、exiiiの小西哲哉さんも現役(と将来)のクリエイターに向けて、HACKberryとCATIAの関係について、熱っぽくプレゼン。DMM.makeの見学ツアーも18時からと20時からの2回にわけて行われた。
そもそもこのイベントはどういう趣旨で企画されたのか。企画・プランニングした、プログレス・テクノロジーズ株式会社の中山岳人代表取締役はその狙いをこう語る。
「今回、出入り自由のカフェ形式でイベントを行ったのはこれから現場に入ってくる方に、モノづくりの現場とそこにいる人達に触れ合ってほしかったんです。昔はスタートアップって、一定のキャリアを重ねた人が一念発起して始めるイメージでした。しかし、最近では新卒の学生がいきなりスタートアップに参加するというケースも増えています。チャレンジングでとてもいいと思うんですが、スキルが中途半端だったり、業界のことをよく知らないと、人材と企業のミスマッチも起きやすい状況でもあるんです」
新卒だけではない。大企業からスタートアップへの転職も珍しいことではなくなった。一口に「スタートアップ志望」とは言っても、さまざまなレイヤーの人々が異なる景色を見ている可能性もある。
「だから、DMM.makeというスタートアップが集まる場で、CATIAやここにある機材――。つまり現場のプロが使うツールに触れながら、交流を深めてほしかったんです。DMM.makeという場も『CATIA』という製品も魅力が一番わかるのは、触れていただくこと。人、場所、ツール、すべてを体感していただくことで、いいマッチングのお手伝いができれば……。そんな思いで今回のDesigner’s Cafeを企画したんです」
実際、DMM.makeでは「攻殻機動隊」の「タチコマ」リアライズプロジェクトなど、さまざまな企画が動いている。なかでも最近話題になったのが、アニメ「PSYCO-PASS(サイコパス)」の作中に登場する、ドミネーターと言われる、形状と機能が変化する特殊拳銃を再現したモデルだ。
「実はあのドミネーターも、Dassault Systemesの最新のクラウド版『3Dエクスペリエンス CATIA 』で設計されたプロダクトなんです。しかもDMM.makeの『3Dエクスペリエンス CATIA 』ですべて開発して製品化に至った第一号。成果物が世に出たという意味でも、あのDesigner’s Cafeは意味深いものだったんです」
まず、プロダクト第一号は無事に市場に出た。だがまだまだ物足りない。中山氏には夢があるという。
「僕、この世界に入ったのは、映画『アイアンマン』のスーパー人工知能『J.A.R.V.I.S.』を作りたかったからなんです。その夢の実現のためには、Dassault Systemesさんにもさらなる前進をお願いしたい。例えば、3DCADソフトの『CATIA』と解析ソフトの『SIMULIA』プランニング管理の『ENOVIA』は、いまは3Dエクスペリエンスで完全に1プラットフォームになり、非常に連携が取りやすくなった。この流れを加速させてほしいですね。ますます進むクラウド化や、より大きくなるデータに対応できるようなネットワークの整備などもさらに推し進めてほしい。僕が外資系の大手ソリューションメーカーを退職して、プログレス・テクノロジーズを立ち上げたのは、『J.A.R.V.I.S.』を作るためなんですから(笑)」
最後に中山氏は「実はDassault Systemesがパートナーなら、本当に作れると思うんですよね。『J.A.R.V.I.S.』」と言った一番近くでプロダクトを知る男ならではの本音と期待感である。
Text&Photos/Tatsuya Matsuura