
シミュレーションは生活のあらゆる局面で使われています。「シミュレーション」の日本語訳には疑似、模擬といった単語が並びますが、実はこれらは訳語として十分ではありません。現実を充実に再現した上において、新しい可能性を明らかにすることが、シミュレーションの本質だからです。
たとえば廃棄物の海面最終処分場から汚泥水が海に漏れ出るのを防ぐには、どのような方法が有効でしょうか。東洋紡総合研究所の住山琢哉氏は、護岸に敷く新構造の積層遮水シートの性能を評価するために、シミュレーションを使いました。シート下に埋設された砕石によるシートの損傷を防ぐ構造を探し当て、海洋汚染をくい止めるためです。
たとえば飛行機の騒音を小さくするには何ができるでしょうか。JAXA航空技術部門の村山光宏氏は、機体空力騒音(飛行機の風切り音)を低減するための空力騒音予測のために、シミュレーションを使いました。風洞実験だけでなく、シミュレーションを用いることで実験では取得できない気流と機体形状と騒音の関係を解き明かし、空港周辺の騒音対策に役立てるためです。
どちらも、実際にプロトタイプを作成し、実験をすることが難しく、シミュレーションをうまく活用した事例になります。シミュレーションはバーチャルツインの動力であり、人々の想像力や展望、可能性を具現化します。バーチャル空間はシミュレーションによってリアルの空間に近づき、リアルの可能性を引き出す役割を担います。実はいま私たちが理解している以上のことが、シミュレーションを使うことで可能になるのです。
当社のシミュレーションブランドSIMULIAでは、6月15日からオンラインのユーザーカンファレンス「SIMULIA COMMUNITY VIRTUAL CONFERENCE JAPAN」を開催します。本稿でご紹介した事例をはじめ、錠剤の圧縮成形、バイオメカニクス、ランニングシューズのソールの素材など様々なシーンで使われているシミュレーションの現在地を知っていただく、またとない機会になっています。登録は無料です。
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