日本企業と日本人の前に立ちはだかる文化という壁
「設計と製造の情報連携ができているメーカーは、想像以上に少ない」とB-EN-Gの営業部副部長、菅原一雅さんが語るように、縦割り文化の色濃く残る企業において部門間の連携を図るのは難しい。ところがダッソー・システムズの『DELMIA Apriso(以下 Apriso)』はそうした設計と製造の垣根を取り払うだけでなく、「生産の現場から経営判断までという情報の垂直統合すらもたらすツール」だという。
「これまでは、下から上がってくる判断材料データが圧倒的に不足していたんです。製造の現場から上がってくる情報は現場でのデータ入力の手間やセンサー等のデータ自動取得の仕組みの不足により、肝心な情報が抜け落ちていたりしていました。ERP(Enterprise Resource Planning)システムに対して、見做し入力を行う企業も多かったと思います。一方、現場データをサマリーにしたものを直結させ、スピーディーな経営判断ができる、現場データをERPに直結させることができるツールがMESシステムであり、代表製品がAprisoです。これにより、現場から経営までの情報の垂直統合ができます」
製品企画などに情報が上がり、活用するというコンセプトについても、同じことが言える。
ものづくりにあたって、もっとも大切なのは品質――というのは当たり前すぎるほど当たり前の話だが、これまで現場からの本当の意味での品質情報が上がってくるのはまれだったという。例えば設計上、設定された上限値や下限値通りの数値が出ているかのチェックを試作時に行うのは当然だとしても、実際の製品でも想定通りの数値を達成できているか、など見るべき項目は多いが、実践できている企業は、まだまだ少ない。
「実は製造開始後に設計基準値のチェックを行う企業は少ないのですが、いざチェックをしてみると、想像以上の数値のブレが発覚することがあると聞いています。原因の発生箇所としては、構造、部材、オペレーション……など可能性は様々なところにあるようです。場合によっては複合要因という可能性も十分にある。設計だけ、製造だけを見ていたら問題はなかなか見つからないのです。Aprisoは、製品ごとに必要な判断の情報を取ろうと思えばすべて一元管理することができる。通常のMESは「制御MES」といって、設備からのデータを蓄積することはできますが、その上位に位置してデータを集約し、ERPと連携できる「管理MES」という機能が欠けている。Aprisoはそこを連携させる機能があります」
「ERPで見えているから良いではないか」との声をよく聞きますが、これは一面からの見え方でしかないと思います。MESは本来、製造現場の資源の最適活用のためのツールですから製造に関わる「現場」で「モノの管理」に利用される。ところがERPは経営部門が使う経営資源のためのツール。目的が違うから情報の読み換えが必要になる。つまり、MESにおける「モノ」の課題を、ERPでは「カネ」の課題に置き換えて考えることが必要になる。」
「Aprisoはその情報の読み替えを支援できます。しかも、逆に経営側から現場に情報を下ろしたいときにも、現場に必要な情報の形にすることができる。これまでの日本企業はMESがなくてもExcelや現場帳票などで人が手間をかけてやってきました。日本で製造業に入ってくる人は日本の教育制度により基礎的な素養が担保されている。1を聞いて10を知るというようなところもあります。ところが、外国ではそうはいかない。例えば、以前、海外でのシステム導入の際に「システムテスト仕様書 兼 記録書」が必要だったので、海外の現地スタッフに、テストの実施と資料作成をお願いした時がありました。サクッと終わらせてくれましたが、テスト仕様書の記録欄は白紙のまま。「あれ? テスト記録は?」と聞いたら、「テスト記録まで書いてくれって言われてない(過剰サービスだ)」と(笑)」
国内では当然のように伝わっていることが伝わらない。できて当たり前のことができない。海外進出した企業なら身に覚えがあるはずだ。「脱中国」と言われていても、いまだ中国への進出は続いているし、東南アジアへの進出も盛んだ。ベトナムでは、日系の電鉄会社が鉄道を敷設し、その沿線に住宅や工場団地を建設し、ショッピングモールを進出させるというような都市開発も行われているという。ほかにも、タイ、マレーシア、フィリピン、ミャンマーといった発展途上地域でも工業団地やインフラの整備が進んでいる。
「そうした異文化圏でビジネスを進めるには、ERPとMES等によるグローバル統制・標準化は欠かせません。AprisoはERPシステムのメンテナンスやダウン時にも、フロント・エンドで稼動継続し、オペレーションの継続をサポートする。リアルタイムで発生するイレギュラーな問題を検知、アラートを挙げてくれる。要するに、国境を越えた文化ギャップを埋めるツール、それがダッソー・システムズの製造実行管理システム『DELMIA Apriso』なのです」
今回ご紹介したダッソー・システムズの製造実行管理システム『DELMIA Apriso』についてのホワイトペーパーでは、具体的にどんな機能で設計と製造の情報連携を実現するのかをご覧いただけます。ご興味のある方はぜひご覧ください。
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製造・物流実行管理ソリューション DELMIA Apriso
他にも、エンジニアに蓄積された経験則をシステム化することで製造の歩留まりを下げる、『DELMIA Operations Intelligence』についても紹介しています。
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製造品質カイゼンのための解析ソリューション DELMIA Operations Intelligence
<バックナンバー>
東洋ビジネスエンジニアリング 菅原一雅さんが説く!Vol.1
Text/Tatsuya Matsuura