Quantcast
Channel: ダッソー・システムズ株式会社 公式ブログ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1439

「機械の販売」から 「成果の販売」へ 〜 IoTによって大きく変わる 産業機械業界のビジネスモデルと収益構造〜

$
0
0

モノのインターネット(IoT)が持続的に成長している今日の状況においては、産業エンジニアリングの最先端を行く企業は、機械だけでなく遥かに多くのものを販売できます。アップタイムの保証、使った分だけ支払うサービスの導入など、業界における競争や収益性の常識を塗り替えています。

 

産業機械業界でこれまで使われてきたビジネスモデルが急速に変わりつつあります。利幅の縮小を埋め合わせる新たな収入源を絶えず追い求める中、モノのインターネット(IoT)の登場が追い風となり、この分野をリードする企業は、製造業の顧客により大きな価値を提供する新しい方法を見つけています。

 

マッキンゼー・アンド・カンパニーのミュンヘンオフィスで「Digitalin Automotive & Industrial」というグローバルな取り組みの責任者を務めるDominik Wee氏は次のように語ります。「生産性をてこ入れするこれまでの手段については万策尽きていますが、IoTは全く新しい収入源への道を切り開いています。情報を収集・送信できるセンサーやアクチュエータ、その他の機器を、対象となるモノに組み込んでネットワークに接続すると、その対象物に関する有効なデータが大量に生成されます。産業機械業界の最先端を行く多くの企業がこうした機会を活用し、使った分だけ支払えばよいサービスやサブスクリプションベースのサービスを提供して競合他社と一線を画しています」

 

「こうしたシフトが、産業機械業界各社の利益の落ち込みを回避できるまさに絶好のタイミングでやってきた」と語るのは、GEデジタルで製造業部門の責任者を務めるPaulBoris氏です。「以前は、産業機械業界のメーカーは対前年比で4%から5%の生産性の伸びをなんとか達成しようとしていました。しかし今は、全体的に1%にまで落ち込んでいます。工場や機械設備はかつてないほど効率的に運営されているため、私たちはバリューチェーン全体で無駄やコストを減らす別の方法を見つける必要があります。その方法がIoTの活用でした」

 

「産業機械業界の企業は、 自社のビジネスモデルを見直さなければ会社の存続 そのものが危うくなります」

DOMINIK WEE
マッキンゼー、 「DIGITAL IN AUTOMOTIVE & INDUSTRIAL」
グローバル・イニシアチブ責任者

 

GEは、IoTを新たな収益の柱とするために10億ドルを投資しました。発電用タービンやジェットエンジン、機関車、医療機器、その他の機械にセンサーを設置する一方、ソフトウェア・システムを開発し、クラウドに接続しました。こうして得られるデータの流れを解析し、機械の生産性と信頼性を高めました。GEオイル&ガス(GEのオイル&ガス事業)が新たに立ち上げたデジタル・ソリューション部門で最高デジタル責任者(CDO)を務めるMatthias Heilmann氏は最近、『MIT Sloan Management Review』誌の「GE’s Big Beton Dataand Analytics」という記事の中で次のように語っています。「10億ドルという額は私たちにとっては大きな投資です。つまり本気の取り組みであり、これこそが私たちの未来なのです」

 

時間単位でエネルギーを制御

 

GEの新しいセンサー・ネットワークが生み出す大量のデータによって、実際に同社のビジネスは「機械の販売」から「成果の販売」、すなわち生産効率化やアップタイム(稼働時間)の改善といった価値を売る方向へと変わりつつあります。

 

Boris氏は次のように説明します。「お客様に成果をもたら自社工場のパフォーマンスを高めています。たとえばつい先日も、米テキサス州に拠点を置く深海掘削企業のDiamond Offshoreと10年契約を結びました。この契約は、坑(こう)井(せい)の噴出防止装置(BOP)のパフォーマンスに関する責任をGEオイル&ガスが全面的に引き受けるものです。このモデルでは「時間単位で圧力を制御」し、Diamond Offshoreは、BOPを利用できる時間の料金だけを、GEオイル&ガスに支払うことになります。私たちの工場でも、これと全く同じ手段とテクノロジーを使ってデジタル・スレッドを実現するつもりです」

 

 

ゼネラルモーターズ(GM)やアップル、サムスン社を含む世界の大手メーカーに製品を提供している日本のロボット/ファクトリー・オートメーション企業のファナックもまた、成果に基づいたビジネスに舵を切っている企業の一社です。ファナックアメリカのゼロ・ダウンタイム(ZDT)サービスセンター責任者、JosephGazzarato氏は次のように語ります。「私たちは機会を見極める作業に着手したばかりで、GM社の26の工場で6,000を超えるロボットからデータを収集するZDTアプリケーションを試しているところです。これだけの数のロボットを監視して、故障につながる可能性のある異常摩耗がないか見ています」。Gazzarato氏によると、潜在的な故障が見つかった場合は「ダウンタイムが発生する前に、部品を送り、サポート要員を派遣して問題に対応する」ということです。

 

Gazzarato氏はZDTはすでにその価値を証明していると説明します。「これまでのところ、故障検出率は100%です。特に、あるトラック製造工場では、解決するのに4時間は要すると思われる稼働停止を回避しました。工場の稼働がわずか1分間停止しただけでもGMの損失が最大20,000ドルになることを考えれば、その影響の大きさがおわかりでしょう」

 

スウェーデンに本社を構え、世界中でベアリングを製造しているSKFも、成果に基づいた手法を活用しています。南北アメリカでSKFの産業界向け営業を担当する社長のJohnSchmidt氏は次のように語ります。「SKFのテクノロジーは現在、世界中で100万件以上の設備を監視しています。その多くはリモートです。私どもにはベアリングが語りかけてくる複雑なニュアンスがわかります。ベアリングは機械の最も重要な部品ですから、それがわかれば、その時々に応じてお客様が使っている機械の調子を判断できます。お客様が変われば対応も異なりますので、私どもはさまざまな方法でお客様と協業します。たとえば製品に関するシンプルな取引や従来どおりのサービスモデル、さらにはパフォーマンスベース契約に至るまで、さまざまな方法をご用意しています」

 

互いに満足できる ウィンウィンのシナリオ

 

英国のケンブリッジ大学で製造研究所(Institutefor Manufacturing)を率いるAndy Neely氏は、GE社やファナック社、SKF社で進行中のこうしたプログラムは、産業機械業界がその使命をどのように捉えるのかを根本的に変える意味合いがあると考えています。

 

「製品の提供からソリューションの提供へ、そして生産高から成果へ、取引から関係へと、大きなシフトが起きています。これは互いに満足できるウィンウィン(Win-Win)のシナリオであり、産業機械業界のプロバイダーは顧客にさらに寄り添ってロイヤルティーを高め、収益を増やします。一方で、顧客であるメーカーは投資に見合った価値を手に入れ、アップタイムや効率性の向上を実現できます」(Neely氏)

 

ただし、産業機械業界に詳しい専門家は、まだIoTによる飛躍を実現していない企業にとっては将来の見通しは厳しいと見ています。シスコで製造・エネルギーの分野をグローバルに統括するDouglasBellin氏は最近、ブログに次のように投稿しています。「メーカーの71%が、IoTは向こう5年間に自社のビジネスにかなりの、あるいは何らかの影響を及ぼすだろうと考えています。しかし24%の企業は、IoTのことを全社的な視点で捉えていません。この種のテクノロジーはどのように計画を策定して活用するのがベストなのかについては、知識格差が非常に大きいのです」

 

「工場や機械設備はかつてないほど効率的に運営されているため、 私たちはバリューチェーン全体で無駄やコストを減らす 別の方法を見つける必要があります。その方法がIOTの活用でした」

PAUL BORIS氏
GEデジタル、製造業部門責任者

ただし、GEのBoris氏は、こうした差があるのはもっともだと語ります。「IoTに向けて舵を切ろうとすると、必ず課題に直面します。大切なことは、最初にどのデータ・パスに手を付けるのかを注意深く考えることです。製造業のバリューチェーンには、設備の本当のパフォーマンスを知る上で重要な小さなデータのかたまりがそこらじゅうにあるので、やり過ぎは禁物です」

 

Wee氏は次のように語ります。「重要なのは、まずは着手することです。非常に大きなチャンスなのですが、最新の動向であるがゆえに、企業にしてみれば不確実な要素が多いのです。産業機械業界の企業は、自社のビジネスモデルを見直さなければ会社の存続そのものが危うくなることは間違いありません」◆

 

by Lindsay James


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1439

Trending Articles